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最高裁判所第二小法廷 昭和48年(オ)31号 判決 1974年5月31日

熊本市春日町五一二番地

上告人

合名会社カネヤマ商店

右代表者清算人

山下鯛蔵

熊本県上益城郡矢部町二二八番地

選定当事者

上告人

山下鯛蔵

右両名訴訟代理人弁護士荒木鼎

被上告人

右代表者法務大臣

中村梅吉

右当事者間の福岡高等裁判所昭和四六年(ネ)第六二二号損害賠償請求事件について、同裁判所が昭和四七年一〇月三〇日言い渡した判決に対し、上告人らから全部破棄を求める旨の上告の申立があつた。よつて、当裁判所は次のとおり判決する。

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人らの負担とする。

理由

上告代理人荒木鼎の上告理由及び上告人らの上告理由について。

所論の点に関する原審の認定判断は、原判決(その引用する第一審判決を含む。)挙示の証拠及びその説示に照らし、正当として是認することができ、その過程に所論の違法はない。右違法を前提とする所論違憲の主張はその前提を欠く。論旨は、採用することができない。

よつて、民訴法四〇一条、九五条、八五条、九三条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 岡原昌男 裁判官 小川信雄 裁判官 大塚喜一郎 裁判官 吉田豊)

選定者目録

熊本県上益城郡矢部町二二八番地

選定者 佐藤朝香

(昭和四八年(オ)第三一号 上告人 合名会社カネヤマ商店 外一名)

上告代理人荒木鼎の上告理由

第壱点 原判決並第一審判決は事実を不当に認定したる違法がある。

事実関係は上告人が第一審で主張したとおりで原審においても更らに事実を明確にして主張し準備書面でもくわしく陳述したとおりであるから本件の訴訟記録に顕はれておる如く主張事実も計算関係も立証も凡てつくしておるのでこれに基く原審及第一審の判断は不法である事実誤認より不当に認定したものである。

即ち事実は昭和四二年二月二八日の御船税務署長が更正決定は青色申告承認取消決定と共に上告人の主張どおりであつて熊本国税局も全部取消の裁決をしたこれは上告人が更正決定の排除又は異議再調査請求国税局への審査請求差押異議等によつてやつと取消裁決に達したものである。

これがために上告人は労力と時間と人件費を投じてできたものであるがこれに要したる費用と苦痛に対する慰籍料としては寧ろ小額に失するも実費と妥当額につき本訴を提起したものであるが輙く審理を尽さずして棄却されたから控訴に及んだものである。

控訴審においても原判決の理由と同一であり本人尋問の結果をもつてしても右判断を左右するに足りないとして斥けられている。

けれども上告人が争つた結果は熊本国税局長の裁決で更正決定は完結している原処分をした御船税務署でも差押処分を取消している。

上告人は国税局長の裁決についての救済を裁判所に求めておるものではない。

原判決は全く筋違いの判断をしてしまつている。この判決を以てしても不当な更正決定は復活せない上告人は不当な更正決定に対しての損害賠償の請求をしている国家賠償法による請求をせないでもかゝる不法行為に対しては当然賠償請求ができるので本訴に及んだものである。

本件は三九年度三八年度も無調査で出したものであるから違法である。

然るに原審も第一審でもこれを知つているにかゝわらず不当であるとしないで不法な判断をしている。

このことは本件訴訟記録にある中村日義の証言、美濃田浩の証言にも明かなことである。

全々証拠もないのに個人の普通預金を否認し課税したことは不当である。

このことは御船税務署も原審判決でも十分窺知し得ることであるのに不当な判断をされている。

本件の未達小切手一七二万円についても乙二四号証の如く借入金は借入当日法人の預金となつておるから返済のための小切手は期末に残つたのが一七二万円で内八二万円は翌月法人の当座が落ち九〇万円は年末に入金になつたのが翌年一月五日と一月七日落ちており完済になつておる。

これ等は甲号証で明かなものであり本人尋問でくわしく説明もし証言してあります。

昭和四五年六月二十二日御船税務署員であつた中村日義が調査に来て知つている旨証言もしている。

乙二四号証は西山調査官が作つたものであつた。

以上の次第で第一審判決は理由として本件課税処分は取消されていることは認めながら本件課税処分をなすに当つて故意過失があるのに輙く証拠が足りないとして斥けている。

而してもあいまいな理由を付して右認定を左右するに足りる証拠はないとしている結局は其の担当係員に故意又は過失があつたとは認め得ないとしている。

上告人らの上告理由

一、昭和四二年二月二十八日付御船税務署長が上告人に対し為したる本件更正決定は青色申告承認取消決定と共に上告人の請求に依り熊本国税局長が全部取消の裁決を下したるものであります。

二、上告人は御船税務署長より受けたる本件更正決定の排除を求めて異議申立、再調査の請求及国税局への審査請求差押異議の申立等に要したる書類の書料、郵便料及本件の為めに会計士佐藤国男に支払つた謝金竝に更正決定及差押への為めに受けたる苦痛に対する慰謝料の請求の為めの本件請求訴訟であります。

三、御船税務署長は国を代表として更正決定したが上告人が異議を申立審査請求の結果税務署の上級である熊本国税局長が全部取消しの裁決を下し税務署自身も亦差押処分を取消した本件は完結したものである。(更正決定の件)

被上告人国は損害賠償に応ずべきである。

四、裁判所には熊本国税局長の裁決を左右する権能はない。原告、被告、共に言及した事実はない。

上告人は熊本国税局長の裁決に対し何等申出て居らないし被上告人も亦裁決について一言もふれて居らない。

原告も被告も一言もふれて居らない熊本局税局長の裁決を無視するか如き本件判決は不当なる判決であります。

五、仮りに百歩を譲つて裁判所に原告、被告共に請求しない本件国税局長の裁決を破る様な判決が許されるとしても本件は次の如き事実なるが故に不当であります。

1 御船税務署長が為したる本件更正決定通知書は税法に反した違法のものであります。

イ 青色申告者に対し税法に反して更正通知を出して居るものなり。

ロ 更正の理由を附記して居らない違法がある。

ハ 法人税法一三〇条には「欠損金額の計算に誤りかあると認められる場合に限り」定めてあり上告人には一分も誤りがないのに更正した違法がある。

ニ 仮りに三十九年度より青色申告承認を取消したりとするも四二年二月二十七日迄は青色申告者として申告し納税完了して居る上告人に対しては青色申告者に依らなかつた違法があります。

2 御船税務署長が為したる本件更正決定は憲法違反である。

イ 理由とする証拠なく法律に依らず更正した。

ロ 銀行名を違へて居る。三十九年度を調査して居ない。

ハ 架空経理、架空仕入、架空借入の事実がない。

ニ 証拠とするもの一つもなく認む、とか認められすとか、想像のみに依つて証拠するもの一つもない違法がある。

即ち憲法八十四条に違反して居ります。

六、熊本地方裁判所の判決は事実誤認の不法な判決であります。

1 当事者の主張原告の請求原因を違つて居る。

イ 判決三枚目一行に

「預金は原告会社代表者の生活余剰金」云云として居りますが

原告は訴状に於て

(過去に持つて居た現金と報酬給料不動産収入)

と主張して居るもので原告の主張を抜いて居る不法がある。

ロ 判決書三枚目九行に

「前記審査請求の結果同年一〇月一八日本件課税処分全部について取消の裁決がなされ」とあるが、裁判があつたのは十一月二十二日である。

ハ、判決五枚目裏五行目下の方に

「原告代表者には生活余剰金はなく右預金は原告会社の簿外預金である旨の資料を提供し」

とあるが

右の如き事実はないのであります。

右の如く原告の主張は原告主張如くして居ないて被告の主張を書き入れ即ち被告の主張を主にした本件の判決は不当ななものであります。

2 判決書八枚目四行に

「右美濃田が右調査に際し未達小切手について貸主を一人も調査せずかつ三十九事業年度の原告会社代表者原告山下個人の所得を調査しなかつたことは認めるが」として居ります。

イ 右は被告の主張であります。

被告は、御船税務署係員が未達小切手一七二万円を否認し課税するのに貸主一人も調査せず否認の更正し課税した事を自白して居ります。

又代表家族の普通預金七一四、六一五円を否認し更正し課税するのに個人の所得の調査をしなかつた事を自白して居ります。

ロ 裁判長は、御船税務署員が未達小切手一七二万円が調査を一つもしないが架装借入金と否認して更正した事実を確認して本件の如き判決をなした事は不当であります。

ハ 又代表者家族の個人預金を否認し課税した事が個人の調査して居らないと自白して居るのに本件の如き判決した事は不当であります。

3 判決書の十六枚目、四行目に(理由の三枚目)

イ 「右普通預金中には原告会社の帳簿に記載されている営業経費、商品仕入代金等の支払金額と目されるものが混入し、その取引の回数が多く金額も多額にのぼつていることに照し原告代表者の生活余剰金蓄積とは認められなかつた」

「加うるに原告会社帳簿に加入金と記載され」言言

とありますが

ロ 原告代表者の家族の普通預金中に記載され居る事実はありません一ケ所も一件もありません。

是の事は四五年二月二日付準備書面に具体的に陳述して居り又乙号証を利益に援用し甲号証にて立証して居ります。

即ち本件更正決定は自三九、八、一至四〇、七、三一間三十九事業年度でありまして三十九事業年度である四〇年七月三十一日迄には全然ありません。

相手方の主張する右の金額は四〇年十月と十二月であつて四十事業年度であります。

四〇年度発生のものが三十九年度にはありません。然も支払済みのものであつて架空のものではありません。

たゞ小切手で払つたのですが小切手を先方の要望にて個人の現金と交換して支払つたので支払つたのは事実で領収証も甲号証として提出してあり一部は相手方認めて居ります。

ハ 回数か多くとありますが一回丈け。

ニ 金額も多額にのぼつているとしてありますが二五六、九五〇円であります。

二五六、九五〇円と多額だとして七一四、六一五円を否認する事は不当も甚だしい。

而して上告人は

甲五十七号証人件費の内訳書、三十八事業年度に税務署に申告した一、二七八、〇〇〇円所得のあつた立証

甲五十八号証三十九年度個人所得のあつたとする人件費の内訳書一、四五〇、〇〇〇円あつた旨の立証

右を提出して三十八年度三十九年度に所得のあつた事を立証して居ります。

右は御船税務署に提出し居るものであり被告も認めて居ります。

尚裁判長は判決三枚目の裏十二行目に

「昭和三十九年一月より四〇年七月まで合計二三一万三、〇〇〇円の収入があり」言言として居るから裁判長自身は知つて居るのであります。

参考の為め記しますと(営業経ヒ、商品代借入金とするもの)

四〇年十月 三六、一六〇 県民税と乙号証に記入しあります。

四〇年十月 八、〇〇〇 山本給料と乙号証に記入しあります

〃 二〇、〇〇〇 藤井給料と乙号証に記入しあります

〃 一一、二五〇 自動車税と乙号証に記入しあります

四〇年十二月 三〇、四八〇 橋本仕入と乙号証に記入してあります。

四〇年十二月 五四、八〇〇 一〇、〇〇〇山下給料と乙号証に記入してあります。

二〇、〇〇〇藤本給料 〃

二四、八〇〇橋本仕入 〃

四〇年十二月 九六、二六〇 九〇、〇〇〇熊谷貸金と乙号証に記入しあります

四、二〇〇鈴木仕入 〃

二、〇六〇包装ヒ 〃

右の如く合計十一枚、二五六、九五〇、一回丈け

四〇年十月とか、四〇年十二月とかであり

三九事業年度で更正された四〇年七月の後であるが故に三十九年度には無関係であります。

合計二五六、九五〇円を多額にのぼつて居るとして七一四、六一五円の否認は不合理であります。

一回丈けのを回数か多くとはオカシイのであります。

此の点は四五、二、二、証人として美濃田浩は

原告の問に対して

「乙五号証旭相互銀行田崎出張所の山下アサカ名義の普通預金たとえば四十年の十月三十日三万六千百六十円それから八千円二万円一万一千二百五十円それから十二月二十日の三万四百八十円それから乙四号証の四十年十二月十一日それから十四日五万四千八百円と九万六千二百六十円以上です」

右の如く証言して居ります。

これで判然とした事は

三十九事業年度の個人の普通預金を生活余剰金は一円もないと断定した理由は空体であつた事であります、原告代表者山下及家族の所得から生活余剰金は一円もないとして判断した裁判長の根拠は営業経費とか商品代と目される金額であつたする判決の理由が

四十年度に属するものであつた一事で以つて根拠なき不合理な判決であつた事は明白です。

ホ 未達小切手の否認について、

四四、一〇、一六準備書面にて

四四、一〇、二三日〃

四五、一、一八日〃

共に甲号証を以つて立証して居ります。

尚乙二十四号証を利益に援用して立証して居ります。

判決書中乙二十四号証の成立を不知と争つた如く書いておりますがその事実はありませんが控訴に於て訂正し成立を認めて利益に援用して居ります。

右の事実を無視した判決である本件判決は不当であります。

ヘ 判決書十六枚目裏七行下の方に

「そして念のため原告代表者個人所得の調査として昭和四〇年八月から昭和四一年八月までの原告会社における収入および原告会社の前身たる合資会社山下泰蔵商店における昭和三十二年三月一日から同会社が解散した時点の昭和三十七年八月十七日までの代表者報酬を調査したがさして生活余剰金があるとは認められなかつた」として居ります三十九事業年度の原告代表者個人及家族の預金を一円も余さす否認し課税したのであるから三十九年度を調査して三十八年度四十年度を念の為めにと言うならわかりますが

三十九年度は全然調査しないで更正したのは間違いであると思います。

三十九年の調査を全然調査しないで平然とする御船税務署長の行為は不当であるとした国税局長の裁決は立派であるがこれを支払して主張する被告国の熊度も不当であると共に之を支持した本件の判決も不当であります。

三十八事業年度の所得は(原告代表者及家族の所得)

甲五十七号証として立証した如く一、二七八、〇〇〇円

三十九年事業年度の所得は(原告代表者及家族の所得)

甲五十八号証として立証した如く一、四五〇、〇〇〇円

でありますが三十九年度は此の外に賞与金が一五〇、〇〇〇円加はります(否認された分)。

尚、三十九年一月から四十年七月迄とする判決にあります如く二、三一三、〇〇〇円の収入があつた事は明白で右の金額が上告人の所得であつた事は被告も認めて居るのにこの点に一言もふれずなした本件判決は不当であります。

被告の調査、御船税務署の調査に依れば原告代表者の所得は四十年度は一、九三七、〇〇〇円として居ります。

三十八年度 一、二八〇、〇〇〇

三十九年度 一、四五〇、〇〇〇 外賞与一五〇、〇〇〇円

四十年度 一、九三七、〇〇〇

右が原告代表者及家族の収入であると被告自身が認めて居るのに一円の預金もなかつたとしての更正が正当と言えるか甚だ以つて不可思議な事であります。

ト 判決十七枚日四行目に

「以上の事実を認めることができ他に右認定を左右するに足りる証拠はない」として居るか原告は次の如く甲号証を以つて、立証して居ります。

甲三十三号証ノ一 郵便貯金通帳山下泰蔵分

甲三十三号証ノ二 右貯金か昭和十八年十月二日現在にて四千〇五円六銭残存し昭和四〇年七月末日五円六銭と利息が存在し居る立証

甲三十四号証ノ一ノ二5口 昭和二十六年五月二十五日より二十八年十一月二十日迄に金五十二万七千円掛込金ありたる事実の立証山下鯛蔵分

甲三十五号証ノ一ノ二1口 昭和二十六年七月二十五日より二十八年十一月二十六日迄の間に七万二千五百円掛込金ありたる事実の立証山下鯛蔵分

甲三十六号証ノ一ノ二1口 昭和二十六年七月二十五日より二十八年十一月二十六日迄の間に金七万二千五百円也の掛込金ありたる事実の立証山下鯛蔵分

甲三十七号証ノ一ノ二1口 昭和二十六年七月二十五日より二十八年十一月二十六日迄の間に金七万弐千五百円也の掛込金ありたる事実の立証山下鯛蔵分

甲三十八号証ノ一ノ二1口 右に同じ

甲三十九号証ノ一ノ二1口 右に同じ

甲四十号証ノ一ノ二1口 昭和二十六年十一月二十六日より二十八年十一月二十六日迄の間に金六万弐千五百積立金ありたる事実の立証山下鯛蔵分

甲四十一号証ノ一ノ二ノ三3口 昭和二十七年十月三十日より二十八年十一月三十日迄の間に金拾万五百円の積立金ありたる事実の立証山下鯛蔵分

甲四十二号証ノ一ノ二1口 昭和二十八年四月三十日より二十八年十一月三十日迄に金四万円の掛金ありたる事実の立証

甲四十三号証ノ一ノ二1口 昭和二十六年九月二十五日より二十八年十一月二十六日迄に金六万七千五百円也の掛込金ありたる事実の立証山下鯛蔵分

右の如く肥後無尽株式会社拾万会に拾六ロ加入し金壱百拾六万円也貯金ありたる事実の立証

甲二十二号証ノ一 山下倭子名義肥後銀行定期積金元帳、昭和二十九年六月七日より昭和三十一年六月七日迄の間に金五拾万円の定期積金ありたる事実の立証(代表者山下鯛蔵の長女)

甲二十二号証ノ二 山下倭子名義肥後銀行定期積金集金カード昭和三十一年一月三十一日より五月二十九日迄の間に定期積金が存在した事実の立証(二四二、一五三円存在した)

ノ三 佐藤アサカ名義肥後銀行浜町支店に定期積金が昭和三十年一月二十六日より三十二年一月十五日迄に金五拾万円の定期積金があつた事実の立証

ノ四 定期集金カード佐藤朝香名義昭和三十年六月二十七日より三十二年五月三十 迄の間に定期積金が金参拾弐万四千四百五拾弐円存在し居りたる事実の立証

甲四十八号証ノ一ノ二 大和銀行熊本支店佐藤アサカ名義表紙

ノ三 右十月二十五日九拾万円の預金ありたる事実の立証

ノ五 四〇年七月現在六千四百弐円の預金残高ありたる事実の立証

佐藤アサカ(アサク)は代表者の家族

甲二十号証ノ一 山下泰裕名義肥後銀行普通預金通帳表紙

ノ二 右三十八年六月七日を として五千円也の預金

三十九年八月十五日金壱百拾万六千参百弐拾九円存在し居る事実

三十九年八月十八日山下アサカ(旭相互山下アサカへ壱百万預入の事実)

ノ三 右四〇年三月三十日乃至四〇年七月末日現在四千二百八十二円預金残高かあつた事実の立証

右は四四年九月十八日付証拠説明書にて陳述

甲四十四号証ノ一ノ二 山下鯛蔵名義公債三十万円

甲四十五号証ノ一ノ二 〃 六万円

甲四十六号証ノ一ノ二 山下鯛蔵名義公債 一万円

甲四十七号証ノ一ノ二 〃 四千円

右合計三十七万四千円は昭和四十年六月発行のもの

右ノ如く上告人は昭和十八年以来の預貯金及公債の所有し居る事実を立証しまして被告も亦右の内三十四号証ノ一ノ二乃至四十三号証ノ一ノ二の外全部を認めて居るものなり。

即ち

甲三十三号証ノ二は昭和十八年十月現在四千余円(現世米と換算すると四百万円)

四十年七月現在五円六銭と利息が存在

甲二十二号証ノ一 五十万円存在

ノ二 二十四万二千百五十三円存在

ノ三 五十万円存在

ノ四 三十二万四千四百五十二円存在

甲十八号証ノ一ノ二ノ三 九十万円の預金存在

ノ五 四〇年七月現在六千四百二円存在

甲二十号証ノ二 三十八年六月に五千円存在

三十九年八月壱百拾万余円存在

四〇年七月四、二八二円存在

甲四十四号証ノ一ノ二乃至四十七号証ノ一ノ二の如く。

公債三七四、〇〇〇円 四〇年七月現在

右は被告が認めて居る預金及公債であります。

裁判長は右事実を全然無視して認定を左右するに足りる証拠はないとして判決した本件の判決は不当であります。

チ 判決書二十枚目の裏二行目に

「昭和三七年八月までの原告代表者の報酬を調査し乍ら三九年事業年度に至らなかつたのは右のような解散という事実からその後の報酬については右とほゞ同程度かそれ以下と認定したためと推認でき」言言として居るが熊本地方裁判所長美山和義は馬鹿か砥脳ではないかと思われます。

合資会社山下泰蔵商店を解散して合名会社山下泰蔵商店を設立したのは発展的解散であつて破産したのではありません。

合名会社山下泰蔵商店は全社員無限責任社員であつて取引上信用を重視しての設立であり会社代表者及家族は皆社員として給料をとつて居る事は事実であり御船税務署も知つて居る筈であります。

即ち法人は確定申告に於て代表者及家族の収入及不動産収入は人件費の内訳書として提出することは義務づけられて居ります。

原告代表者及家族の所得は御船税務署長と共によく知つて居る筈であります。

即ち三十八事業年度も申告してあり源泉税も御船税務署に申告してあります。

御船税務署長は調査せず共よく知つて居る筈であります。

よく知つていて知らぬ振りして更正して居るのです。

原告代表者及家族が毎月給料取つて居る事は充分知つて居て知らぬとして更正した本件の更正も不当でありその事を正当かの如く主張する被告法務大臣も不当でありその不当を支持しての本件判決も亦不当であります。

尚裁判長は「ほゞ同程度かそれ以下と認定したためと推認でき」として居りますが

被告は原告代表者の収入が三十七年度のそれ以下と主張して居りません。それ以下と主張個所はありません。

裁判長は、勝手に原告被告共に主張して居ない事を判決理由に書いて居る不当があります。

以上

又差押処分も不法行為が成立するのに上告人が原審で主張しているのを理由がないと判断されている個人山下に対する差押が無通告でされているとしても違法とは認めないとしている。

原審もその理由として原判決理由説示と同一であるからこれを引用するとして当審における証拠調の結果をもつてしても右認定判断を左右するに足りない」と謂うにあり。

原審は上告人の主張に係る請求理由の有無を審究せずして請求を斥けたるは不法である。

原審は上告人のこれまでの請求した確定の事実に対しては被上告人に過失ありと判定する外ないのに原審は過失に関する法則の適用を誤まりたる不法あるを免れない被上告人が充分の調査を為さずして漫然請求を棄却したことは上告人に損害を及ぼしたること明かであつて善良なる注意を払つたとは謂うを得ず以上の次第で原判決は破 を免れな原判決は憲法違背があると思料する。

不法に上告人の権利を侵害して著しく損害を与えたことは憲法上保障されている財産権の侵害である。

以上のとおり上告理由とする。

以上

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